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シミやシワは昔から女性の関心が高い分野です。誰もが、いつまでも美しくありたいと考えています。そのためいろいろな美容法が研究されてきました。しかし、これまでは鍼灸治療で美しくなろうという人はあまり多くありませんでした。顔に鍼をするのはこわいという人も多かったのです。長い間、その状況が続いていたのですが、ここ10年ほどでその考え方がガラッと変わってきました。近年は新しく「美容鍼灸」というジャンルが登場し、注目を集めています。今回はシミやシワを含む「美容鍼灸」について勉強していこうと思います。


美容鍼灸の特徴
もともと、美容目的で鍼灸治療を受けようと考える人が少なかったように、鍼灸師側も美容を意識する人があまりいませんでした。それはやはり、普段患者さんを「治療」しているという考えがあり、美容のために鍼灸をするというのはピンとこない人が多かったのでしょう。
しかし、美容鍼灸が少しずつ広がるにつれ、鍼灸師側の考えも変化し始めました。「美容鍼灸」とは単に顔のシワをとるためだけに鍼や灸をするのではなく、美しい体を作るために体を治療し、その結果として顔のシワなども改善させるという考え方です。このように「美容鍼灸」も広い意味での治療であるという考え方が広がるにつれ、美容鍼灸を行う鍼灸師が増えてきました。今では、美容のために鍼灸を学ぶといって、学校に入学してくる人もいるくらいです。
このように、美容鍼灸の特徴として、単に顔に鍼をするだけではなく、体全体を診て治療し、健康で美しい体を手に入れる「健康美」という考え方があります。いわゆるエステでは「治療」を行うことはできませんが、鍼灸ではこの「治療」を上手に組み合わせていきます。


シミ・シワの鍼灸治療
まずはシミやシワの治療について考えていきましょう。シミについては、肝斑などホルモンの異常によって現れたものを主に治療していきます。鍼や灸によりホルモンバランスを整えることによりシミを改善します。年を重ねると出てくる「老人性色素斑」などは、良性腫瘍の一種ですので、なかなか良くならないことが多いです。
次にシワですが、こちらは鍼灸治療がよく効きます。顔面部のシワのあるところを中心に、顔の筋肉のつき方なども意識しながら鍼や灸をしていきます。鍼はなるべく細い鍼を浅く刺すことが多いです。深く刺すことはほとんどないでしょう。灸は棒灸というタイプの灸を使うところが多いようです。棒状にもぐさをまとめた灸で、肌から離して温めていくので、火傷することはほとんどありません。
顔に限った話ではないのですが、基本的にシワのあるところというのはツボになっていることが多いです。これは、シワというのはどこにでもできるものではなく、筋肉を動かしたときに、力がかかっているために起こるので、そこに体の反応としてツボが現れやすいのです。このツボに刺激をしてやれば、肌にかかっている力をうまくゆるめることができ、肌の張りがよくなるので周囲の小じわも改善されていきます。
また、顔の皮膚をきれいにするために、顔以外のツボを使用することもあります。
首や後頚部、頭のツボなどもよく使います。特に後頚部への刺激では、眼の充血やくまなども改善することが多々あります。「天柱(てんちゅう;後頚部で頚椎の横1.5cm、髪の生え際の少し上)」などは特にその効果が高いです。ここへの鍼灸施術は主にうつぶせで行いますので、そのときに肩の方も治療するとさらに効果が高まります。顔に鍼をせずに肩のこりを治療しただけで、顔の肌の張りがよくなり、化粧がいつもよりきれいにできるようになったという人もいるくらいです。
また、皮膚の状態を良くする効果が高いツボに、「肩尖(けんせん:鎖骨と肩甲棘でできる肩関節の圧痛点)」があります。ここは肌の張りを良くするほか、ニキビや湿疹なども治すことができます。主にお灸を使います。肌の状態が悪い人は灸をすえても熱さを感じにくいので、熱さを感じるまで何壮も灸をすえていきます。この灸は継続すると効いてきます。
ほかにも手足のツボを使うこともあります。曲池(きょくち:肘を曲げてできるしわの外端)」や「中封(ちゅうほう:内くるぶしの前1cm)」がいいでしょう。これらのツボも肌へ影響を与えやすいところで、治療していると肌がきめ細かくなってきます。


全身の調子を整える
以上はシミやシワに対する治療ですが、それらと合わせて、全身の治療も行います。鍼灸治療では「皮膚は内蔵の鏡」と考えられています。どういうことかというと、「内臓の働きが悪くなると、皮膚にも影響が現れる」というもので、そこから内臓の働きを整えてやることで、皮膚の状態を改善しようと考えています。そのため、「体の中からきれいになる」という人もいるのです。
内臓の働きが弱ってくると、多くは食欲がなくなったり、便秘であったりと、いろいろな症状が出てきます。これらの症状も治療し、体質改善を行うことで、健康で美しい体を作ります。食事が食べられなかったり、便通がよくないと、うまく体に栄養を取り込むことができなくなります。当然、肌への栄養もなくなり、肌が荒れたりしてしまいます。

中脘(ちゅうかん:おへそとみぞおちの中間)」や「関元(かんげん:おへその下3cm)」に鍼や灸をすると食欲が出て、便通もよくなります。
ほかには、冷え性のある女性も多いですが、この冷えと硫黄のも肌に悪影響があるので治療していきます。「三陰交(さんいんこう:内くるぶしの上3cm)」などに灸頭鍼すると体全体がポカポカと温もってきます。患者さんのなかには冷え性があっても気づいていない人や、昔からあってあきらめている人もいます。そのような人に治療すると冷え性が改善され、 その他の症状までもがよくなってしまうことが多いです。一度鍼灸師に相談してみましょう。
また、睡眠不足も肌へ大きな負担をかけてしまいます。寝不足でできるくまや肌荒れなども多いので、不眠の人に対してはよく眠れるようになる治療も行います。先ほども出てきた「天柱」も不眠に対してよく効きます。また「失眠(しつみん:かかとの真ん中)」に灸するのも効果があります。


皮下出血について
美容鍼灸のやり方について簡単に書いてきました。もしこれらの鍼灸治療を受けてみようと考えている人に少し注意点があります。それは皮下出血についてです。
皮下出血とは言い換えると、内出血や青あざです。皮下出血は多くは1~2週間ほどで消えていきます。必ず消えるので安心してください。またこの皮下出血ですが、「皮下出血に一度なり治った時の方が肌がよくなる」という特徴もあります。
鍼灸治療では細い鍼を使って体に刺すのですが、たまに皮下出血が起こり青くなることがあります。これは鍼の種類やテクニックにかかわらず、一定の確率で起こってしまいます。特に美容鍼灸の場合では顔にも鍼を刺しますので、顔に皮下出血が起こる可能性もあります。この点は前もって認識しておいてください。


まとめ
健康の基本は「快食・快便・快眠」です。これは美容鍼灸であっても変わりません。規則正しい生活を送ることで美しさを維持することが可能です。また適度な運動というのも体にとって必要です。運動により新陳代謝を高めることで、肌もよくなってきます。そのうえで鍼灸治療も組み合わせてきれいな体を作ることができればいいと思います


養生灸のススメより
 

 

  




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